超弾性合金は、変形させても除荷すると、元にもどる性質をもった金属である。 通常の金属よりも変形が起こりにくいため、メガネフレームや携帯電話などのアンテナに利用されている。 この特性を活かし、繰り返し運動を行い、変形幅の大きい装具に応用できないかと考えた。
まず我々は、3点つまみwire式装具(1のピアノ線部分を超弾性合金バネで応用してみた(図1)。 使用感に差はほとんどなかったが、ピアノ線と違い、形状記憶後のバネは曲げ加工がしにくく、 指への細かい適合が得られなかった。 また、この形式の装具では、手掌側にワイヤーが当たったり、把持の際に装具が邪魔になることがあり、 この点を見直すことにした。
次に製作したものは、超弾性合金バネの両端に、プラスチック材を取り付け、バンドにて指をホールドさせている(図2)。 バネは背側を通るため、把持動作に影響しにくい。また、超弾性合金バネは、利用者の状態に合わせ、 プラスチック位置、線形、曲率半径、本数などを変え対応できる。このような点を踏まえ、 本装具をいくつかの症例で使用、評価を行った。